ムキ出しはちょっと、、、

ハードシェルとソフトターゲット
直訳すれば硬い殻と軟らかい標的という意味だが、これはこの10年イラク等で行われてきた「少人数での戦闘」つまり民間人・テロリスト・敵・友軍などが入り混じった環境で行われる近代的な市街地戦闘において良く使われる言葉だ。これを説明するにはカブトムシを想像してくれると手っ取り早い。硬い殻で覆われたカブトムシはその下に筋組織があり臓器を保護している、障害を受けると致命的な重要臓器はさらにその奥にある。そして武器となる角を最前面に配置している。昆虫に限らず人間であっても動脈は静脈より深い位置に走っているし、心臓や脳など重要臓器は骨でできたケースに覆われて保護されている。これが厳しい自然界を生き延びた生命の基礎であり、これは同じく生命の危機にさらされる軍隊にも適応される。
一昔前のように戦闘の第一線や後方地域というものが形成されなくなった上記のような環境では部隊はその環境の中で自律し、一つの独立した生命体であることを余儀なくされる。「少人数」の中に「武器」「通信」「医療」「爆破」「情報」などの専門家が組み込まれるのはそのためだ。そしてより強固な殻を持った装甲のある車両等を一番外側に配置し、次に装甲の弱い一般車両のようなもの、人員も完全武装・ボディアーマー装着者は外、テロの標的になり易いソフトターゲットである民間人は軍人より内側に配置して行動を行うというのが基本的な概念だ。移動する際もこれを基本にフォーメーションを組む。まあ当然と言えば当然!小学生でも考えりゃこうなるでしょうって事をもっともらしく説明したが、これは軍事行動に限らず一国の防衛に関しても同じ事のはずである。強固な殻の内側で国民が安心して国という生命体を維持すべく生活をする。以前国境には隣国が友好国であったとしても適度な軍事力を配置するのが普通であると記したが、軍人は民間人の盾にならなければ存在価値が無いのだ。そしてその軍人とて同じ国民なのだから適切な装備を、より固い殻と状況に合せて彼らを守れるだけの適切な武器を装備するのが防衛の基礎だと考える。
さて八重山では相変わらず自衛隊配備に関する問題が燻っているが、上記の考えを元にこの地域を考察するなら「沖縄本島以西は内臓ムキ出し」というのが適切な表現だ。与那国の駐在さん2人では武装した兵士一人を止める事すら出来ない現実を理解して、せめてムキ出しの内臓に薄皮一枚覆う位の事は反対する理由すら見つからない。対馬と同等の沿岸警備隊なら中国の軍事力と比較すればホント薄皮、本来なら西方普通科連隊を移駐させても良い位のリスクを抱えているのが現状なのだ。それでも与那国の自衛隊反対派は言う「基地があるから戦争に巻き込まれる、ミサイルが飛んでくる、、、」と、、、でも考えて欲しい。敵がミサイルを撃つか?上陸してくるか?海上封鎖するか?それは私達が決められる事では無い、私達が出来るのはその可能性に備えてムキ出しの内臓を筋肉で覆い、それを鍛え、硬い鎧で覆い、適切な武力を鍛錬し、いざと言う時、国という私達の生命体の一部であるこの地域を守るための努力を日々行っておく事だけなんだと言う事。私は軍隊経験もない普通の国民という脆弱な存在が、他国の行動次第で危険に曝されるリスクに怯えて生活を続ける状態が適切な防衛だとは決して思わない。